好きな人
□〜旅行〜
1ページ/9ページ
「本当に、来ちゃいましたね…」
「口だけだと思ってた?」
周りは温泉街。人はお年寄りが多く、知っている人はいない。世間では有名な温泉街。
「来たかったんだ、ここ」
瑠の隣で、嬉しそうに周りを見る吉瀬。
今、二人は温泉街に旅行に来ていた。
姉の紗季には、友達と旅行に行ってくると言って。
「旅館に、荷物を置きに行こうよ」
「あ、はい」
吉瀬は、本当に旅行計画を立ててきた。
温泉と言うところが、吉瀬らしいと思う。
「仕事、よく有給取れましたね」
「そりゃ、今までにあんまり休みを取らずに頑張ってたから」
「そうなんですか?でも、そしたら余計に貴重な休みを俺との旅行に使っても良いんですか?」
溜めていた有給と言っても、そこまでの量はないと思う。
それを、俺との1泊2日の旅行に使うなんて。
「瑠くんは、気にしすぎだよ。前にも言ったでしょ?僕は君といるとすごく癒されるし、楽しいんだよ」
「それは……嬉しいんですけど」
「じゃあ、良いじゃないですか」
ほら、と吉瀬は瑠の手首を掴む。
「え、ちょっと吉瀬さん……」
「チェックインの時間があるんです」
いや、と言っても…。
これは、別にしなくても良いんじゃないか?
瑠はそう思いながらも、大した抵抗もせずにそのまま吉瀬について行った。
.