好きな人

□〜自覚、出会い〜
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旅行の帰り道、瑠は考えていた。

吉瀬のことが好き。

友達としてではなく、本当に。

自覚したからこそ、離れないといけないのでは……?

「どうしたの?考え事?」

瑠は吉瀬の車の助手席に乗っていた。

あの事をお互いに触れない。

たぶん、触れるという事は何かが変わるということ。

ただ吉瀬は、謝らなかった。

酔っていたからと、謝らなかった。

ただ、痛かったのにゴメン、とだけしか謝らなかった。

「はい、これからのことを考えてました」

「そう」

吉瀬は手短かな所に車を止めた。

「それは、僕とのこと?」

吉瀬は車の暖房を付けて瑠の方へ身体を向けた。

「はい…」

たぶん、吉瀬は聞いた。

聞こえているに決まっている。


「俺、言っちゃいましたよね?」

「何を?」

聞こえているのに、敢えて言わせるのか、この人は。

「俺が、吉瀬さんに対して好きって言ったの」

「うん。聞こえてた」

「俺、吉瀬さんの事好きです、本当に……好きなんです」

心から振り絞るように告げる。

引かれると思っているからじゃない。

相手に告白をするという行為に慣れていないから。

初めてだから…。

だから、自然と声が震える。

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