ツインズ

□心の底で…
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「……キスした」

「…」

悠は顔を伏せたまま言った。

しばしの沈黙が流れて、飛鳥が口を開いた。

「悠さ、言ってなかった?」

「言った」

「澪先輩は手強そうだから、上手くいくまで手は出さないって」

澪先輩を好きだと気付いた時に、悠に言った。

自分の中で、澪先輩に対して接する基準にもしていた。

理央先輩みたいに、出来る自信がなかったから。

「…それで?」

飛鳥は、続きを促す。

雰囲気で、悠の話がこれで終わりじゃないと察したのだろう。

「バイバイって言った」

「はぁ?」

間髪入れず、飛鳥の大きな声で聞き返した。

一瞬で周りの注目を浴びた。

「すいません…」

飛鳥は謝り、小声で悠に聞いた。

「なんでそんな事言ったんだよ」

馬鹿か、と飛鳥は眉間にしわを寄せる。

「俺は理央先輩と違うからな」

「どういう意味だよ」

「否定され続けるのはキツいんだよ」

「は?普通に考えたら男同士なんだから、簡単にいくわけないだろ?」

確かに、そうだ。

でも、厳密には違う。

「あの人、元から女ダメだよ」

「それこそ、どういう意味だよ」

好きだから、無意識に澪を見ていた。

いつでも目で追っていた。

生徒会役員に選ばれた時から、それは加速した。

そして気付いた。

最初、双子だからなのかと思った。

いつも澪は、理央を見ていた。

見守るように…微笑みながら。

そして、うっとりとした瞳で。

その見方が余りにも熱っぽいから、気付いた。

理央先輩のこと、もしかして?って…。

「だから、そう思った。たまに出る女子の話題に嫌悪の目で見てたしな」

「だからと言って…」

「でもな、たまに怖い目で理央先輩を見るんだ、あの人」

「…それは」

飛鳥の反応から、それには気付いていたようだ。
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