秘める恋
□秘める想い
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「なんで俺と同じ学校じゃなくて男子校に行ったの?」
「俺は兄さんみたいに偉くなかったから」
「嘘だ」
「本当だって」
好きだと自覚したから。隠さなければならないと気付いたから。兄さんと一緒にいたかったけど、好きだからこそ、これ以上傍にいるのは辛かった。
だから、同じ学校を受けたけど、敢えて落ちて違う学校にした。
「じゃあ、せめて大学は同じ所にしろよ?」
唯人の頭をクシャクシャと撫でる。
「なんで?」
「唯人が後輩だと嬉しいから」
唯人が弱い優しい笑みで、僚は言う。
このままだと顔が赤くなりそうで、唯人は誤魔化すように僚の手を優しく払う。
「兄さんみたいに偉くないから無理だって…」
「大丈夫。今度は俺も教えるから」
「就職活動で忙しい時期なのに?」
「唯人のためだし」
だからさ、兄さん。そんな風に俺にとって堪らない言葉、言わないで。
言われるたび、嬉しくて、幸せで、苦しくなる。
「また、そんな事言って…」
「疑ってる?」
「信じてるよ」
「本当に分かってるか?俺が唯人のことをどれだけ好きか」
知ってるよ、ちゃんと。従弟として、でしょ?
「俺も、兄さんのこと好きだよ」
兄さんみたいに、従兄としてではないけれど。
まるで何とも思ってないような平気な顔して、少しだけの本気を載せて唯人は言った。こんな風に、本気の気持ちを茶化して言うのって、慣れない。