秘める恋
□偽る想い
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「とにかく、俺が気付いたんだから、とっくに僚さんは気付いてるだろ」
学校でしか一緒じゃない達也が、朝のやりとりだけで勘づいた。
元々察しが良いことも影響してるのかもしれないけど、普段一緒にいる僚が気付いてるのは確かだった。
「…」
「気を付けろよ。あの人、怒ったら怖そうだから」
頭にのせられている手が、なんだか良かった。
「でも、兄さんが怒ったところ見たことない」
「だからこそ、これ以上怒らせんなって意味」
手の温もりを感じながら、唯人は達也に言った。
「達也って、俺に優しいよね」
「なんだよ、急に」
そう言って達也が手を退けよとしたから、唯人は反射的にその手を掴んだ。
「…なんで?」
「なんでって…。大切な親友だからだろ?」
「それって、変わらない?」
何故か一瞬、達也の瞳が悲しそうに見えた。
「変わらねぇよ」
達也は、笑った。
そして、唯人を優しく抱き締めた。
「お前が望むなら、俺はずっと、唯人の味方だよ」
その時の達也の表情を見ておけば良かったと、唯人は後から後悔した。