秘める恋

□偽る想い
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達也からの忠告があって間もなく、それは起きた。



唯人は、僚の家に母と一緒に晩ご飯を食べに来ていた。

食べ終わった後は、自然と親と子に分かれた。

「…」

僚の部屋にいる唯人は、話しかけることが出来ず黙っていた。

余りにも長い沈黙が流れた。

「俺、宿題がまだ終わってないから帰るね」

慣れない沈黙に耐えきれず、唯人は部屋の扉から出ようとした。

「唯人」

それを、僚に手首を掴まれたことで制止された。

「…なに?」

腕を引いたりするが、なかなか僚から逃れられない。

「最近の唯人、変」

「そんな事、ないけど…」

「嘘だ」

「本当だよ…」

従弟らしくすれば、上手くいくと思ってた。それなのに、何故か上手くいかない。

どうして兄さんは、そんな顔してるの?

「何かあった?」

「痛いよ、兄さん」

冗談抜きで、掴まれた手首が痛い。

「俺には、言えないこと?」

兄さんを好きな気持ちを隠す為に、従弟らしく振る舞おうとした。

そんな事、本人に言えるわけがない。

ねぇ、なんでそんな悲しそうな顔するの?

それなのに、どうして俺の手首を掴む手はそんなに強いの?



「あのね…兄さん……」


「分かった」


ふっと、拘束していた力が抜けた。だらりと、掴まれていた腕が落ちた。


「待っ…」


「宿題、早く終わらせろよ」

止めて。

そんな顔、しないで…。
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