秘める恋
□揺れる想い
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「俺……」
唯人は、達也の腕の中で泣く。その光景を、理由を知らないクラスのみんなは呆然とする。
「おい、見んな」
達也はその周りの目に気付いたのか、見ていたクラスのみんなを睨んだ。
「唯人、出よ」
そして、唯人の腕を引っ張り教室から出た。
「…別にいいのに」
泣いた顔を隠すように歩きながら、唯人は達也に話す。
「俺が嫌だ」
達也は少し早足で、誰もいないだろう屋上へと向かう。
「なんで?」
唯人には、達也が嫌がる理由が分からなかった。
「…お前の泣き顔、なんで不特定多数に見せなきゃいけないんだ」
ふてくされたように達也が言い、唯人は改めて思う。
本当に、達也は自分のことが好きなのだと。
唯人は、今まで気付かなかった達也の気持ちを実感して、涙が引く代わりに顔が段々赤くなっていく。
達也は、唯人の腕を引いているのでその変化に気付かないのか、「じろじろ見やがって」とぶつぶつ言っている。
それまで感じなかった温かい感情を、唯人は抱いていた。
朝に僚と一緒に行かない代わり、達也と一緒に行くことが増えた。家も近いからと、達也が唯人の家に迎えに来ることもあった。
前と時間帯も違い、僚と会う回数が減り、達也と時間を共にする事が増えた。
最初は違和感があった習慣の変化も、次第になれてきた。
「じゃあ達也、また明日」
「おう、またな」
「明日は俺が達也のところに行くよ」
「別にいい」
「いつも達也が来てくれるから、たまにはさ」
「…わかった」
「じゃあね」
唯人は達也に手を振り、家に入った。