秘める恋

□交錯する想い
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それからの生活は、とても幸せで……楽しかった。

美佐とは、僚についての話題はあの時だけだった。

唯人の僚に対しての気持ちを知っていたのだから、きっと最近の唯人の変化も気付いているだろう。

…何も、言ってこないけど。

亜弥ともあれきりだった。

唯人と会うのが嫌だからか、僚が元気になって必要なくなったのか。

まあ、どちらでも構わないのだが……。




一方、唯人と達也というと……。




「今度さ、映画でも見に行かない?」

「いいな。今気になるのたくさん出てるし」

「じゃあ、決まり」

会話だけで言うなら、前と全く変わっていなかった。

ただ、握っている手が、前の関係とは違うことを示していた。




ずっとずっと、こんな風に何も分からない子供のように、幸せでいられたら良かったのに……。






*****





「あー、楽しかった」

唯人は達也と、ファーストフード店に来ていた。

「あの映画、予想より楽しかった」

「でも、あの終わりは絶対に続きを作る雰囲気だよね」

「分かる」

さっき見た映画の感想を二人で話しながら、注文した物を口に運ぶ。

声をかけたそうにしている周りの女の人達には気付いていたけど、知らないフリをした。

「…達也のせいだからな」

「なんだよ、急に」

しかし、女の人達を無視する事は出来ても不満を口に出す事は抑えられなかった。

「…流石に気付くでしょ」

「あぁ、周り?」

「達也と遊ぶといつもこんな感じ」

「今までもそうだっただろ?今更気にしなくても…」

確かに、今までと一緒だ。

でも、声をかけられたらどうしよう、という不安は昔みたいに感じない。

ただ、見るなと思うだけ。

「それよりも俺は、少しだけ混じってる男の視線がムカつく」

「いる?そんなの」

言われて周りを見回してみるが、見つからなかった。

「バカ、見るなって」

「…でも、それって今回だけ?」

唯人は聞いてみた。

「いや、毎回」

「じゃあそれこそ、今更じゃない?」

「違うよ。今回は、前とは違うだろ?だから余計に苛々する」

「…達也?」

達也は舌打ちをした。

「前は親友だけど、今は恋人だろ?俺のもんを見るなって思うんだよ」

普通より少し大きな声で言うから、周りによく聞こえたみたいだ。


唯人は恥ずかしくて……でも嬉しかった。


「……達也ってバカ」

「は?」

「ううん、ありがと」

本当に、ありがとう。

そんなに広い心で俺を思ってくれて…。
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