秘める恋

□すれ違う想い
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「どうかしたか?急に」

唯人は近くにある公園のベンチに座っていた。

「…達也」

赤くなった目で、来てくれた達也を見上げた。

「何があったんだよ、そんなに泣いて…。目が赤くなるほど…」

達也は唯人の瞳を指で撫でる。

「達也っ」

唯人は達也に抱きついた。

「本当に、何があったんだ?」




「兄さんに、告白された」



達也はそれだけで何かを察したのか、唯人を離した。



「お前が望むなら、構わないよ」



唯人は、達也に離された事で不安になるが、達也が何か勘違いしていると分かった。


「あのね、達也」

「唯人の気持ちは知ってるつもりだから」

「バカ!」

唯人は思わず達也を叩いていた。

「分かってない!達也は全然分かってない!」

「…え」

「俺、ちゃんと言ったの!好きな人がいるって。達也は俺の恋人だって。だから、ちゃんと断ったの」

「―…本当に?」

今度は達也から、唯人を腕の中に収めた。

「うん、本当」

「じゃあ、なんで泣いてたんだ?」

「申し訳なかったんだ。俺が、兄さんをふる資格なんてないのにって…」

達也が、唯人の額に口付けを落とした。

「でも、俺は前みたいに兄さんを好きじゃなかったから。だから…ん」

額から、唇に落ちてきた。

「もう、いい。唯人が俺を選んでくれた事実があれば、充分だ」

「…達也。もう一回、して?」

唯人が望むと、達也はその通りにしてくれた。

そっと触れて、離れて。その繰り返しの後、ゆっくりと重なる。

「…ん…」



公園の薄暗がりの中で、二人の姿が浮かんでいた。
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