秘める恋

□すれ違う想い
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「話ってなに?」


「…ちょっと、な」



僚は亜弥を呼び出していた。

「…」

沈黙が長く続く。


「嫌だなー、この空気」


亜弥は僚の雰囲気から何かを察したのか、地面を蹴りながら腕を組む。


「何か、良くない話?」


僚が亜弥を呼び出すだけでも珍しいのに、その上"話がある"と言われれば、あまり良い予感はしない。


「ずっと、考えてた」

「うん」


僚は、言いにくそうに口を開く。それを亜弥は僚をじっと見て聞く。


「いつ言おうか、考えてた」

「うん」


「最近、色々あってさ…」


「気付いちゃったの?」

亜弥が、僚の言葉から続けて言う。

「…」

「ずっと、気付かなかったら良かったのにな」

明るい声で、でも表情は悲しそうだった。

「亜弥」

「僚は、頑張ったもんね」

「…」

「私のこと、好きになろうとしてくれた」

「違う」

僚は亜弥の言葉を否定する。

「じゃあ、言い直す。僚は、唯人くんより私を好きになろうと頑張ってくれたよね」


唯人の名前が出て、僚は露骨に動揺する。


「亜弥、いつから」

「ずっと、気付かなかったら良かったのにな。ずっと、頑張ってくれてたら良かったのに」

「…」

「唯人くんを越える人が現れないって、気付かなかったら良かった」

亜弥は、涙を堪えながら笑う。

「気付かないと思った?」

「…多少」

「好きな人のことだから…。自然と見てたら、気付いた。僚は、私よりも好きな人がいるって」

「でも、どうしてそれが唯人だって気付いたんだ」

普通なら、他の女子に目をつけるだろう。

「僚は、露骨だよ?でも、相手の気持ちには鈍すぎ」

「どういう…」

「態度、違いすぎ。だって、凄い愛しい物を見るような眼をして、とても愛しそうに触れるの。比べなくても判るくらい、露骨だよ」

苦笑混じりに亜弥に指摘されるが、僚は全く無意識のことだった。


「それでも、僚は分からなかったんでしょ?唯人くんの気持ち」


その言い方だと、亜弥は知っていたみたいだ。

「だから、私と付き合ってみたり、一生懸命良いお兄さんでいようとした…。違う?」

「いや、正しい」


全くその通りで、訂正する箇所がない。






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