秘める恋
□本当の想い
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「俺が好きなのは達也だよ!」
周りなんか、気にしなかった。
唯人は思いきり叫んだ。
「おい…」
その音量に、達也は立ち止まり唯人を止めようとする。
しかし、唯人は構わず続ける。
「俺が好きなのは、達也だよ?兄さんじゃない。どうして分かってくれないの?」
こんなに好きなのに。
勘違いなんかされたら、切ない。
「達也が聞いたのは、俺が兄さんに昔の事を言ってたの。あれ、本当は続きがあったんだ」
「…続き?」
「昔は確かに兄さんが好きだった。でも今は、兄さんじゃなくて達也が好きだって。そう、言うつもりだったんだ…」
本当なんだ、達也。
信じて欲しい、お願いだから。
俺が好きなのは、達也だ。
唯人は、それ以上は言わずに達也に目で訴える。
「…馬鹿だよな、唯人は」
達也が、笑みを浮かべた。
それは、いつもの優しい達也と同じものだった。
「長年片思いしてた相手から告白されて。なのに、そっちを断って俺の所に来るなんてよ」
「仕方ないじゃん。俺が好きなのは達也なんだから」
「…本当、馬鹿だな、唯人」
達也は家に向かうのを止めて、唯人に近付いた。
「ありがと。んで、好きだ。怒ったりして、ごめんな?」
「俺こそ、勘違いさせるような事を言ってゴメン…」
想いが通じあわないのが、これほど辛いなんて思ってもみなかった。
唯人と達也は、人目も憚らず、お互いの想いを感じながら抱き合っていた。
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