秘める恋
□本当の想い
4ページ/15ページ
「用件はそれだけ。じゃあ」
「ちょっと待ってください」
達也は、家に入るのを止めて僚を呼び止めた。
「何かあったんですか…?」
「俺の心配?らしくないな」
「らしくないのはどっちですか。貴方が、唯人を頼むなんて、どうかしたんですか」
「察しが良い相手、苦手だな」
「僚さんの好みは知りません」
だから早く言えと、無言で促す。
「海外への留学を薦められた。色々条件も良いし、了解した」
「了解したんですか…」
「時期も条件も良いからな」
「唯人に、言ってないんですか?」
唯人は、何も知らない。何も知らされていない。
普段の唯人を見ていれば、分かる。
「俺等は、親が仲良いから話は伝わる。俺から言わなくても良いだろ」
違う、そうじゃない。
誰から言われるかで、聞かされる方の受け取り方も変わる。
そんな事、僚が解らない訳がないだろう。
「…嫌だね、その目。こっちが言う以上の意図を汲み取ってる奴の目だ」
唯人は、鈍いから。
きっと、僚の意図には気付けないだろう。
.