秘める恋

□重なる想い
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唯人は自分の気持ちを言葉にまとめながら、言う。


「あの時、分かったんだ。俺はこんな風に触って貰いたかったんだって」

「っ」

何かを堪えるように、僚は唯人を見る。


「……従兄として好きだと思ってた。でも、自分でも気付かない内に、まだ兄さんを好きだったみたい」


もう、大丈夫だと思っていたのに……。


「――好き、兄さん」


だから……。


「―――俺を置いて行かないで」



振り絞るように声を出した。


「……唯人」

「ごめんなさい、兄さん。気付くの遅くてごめんなさい。俺のせいで、色々とごめんね。でも、好き。好きなんだ」


涙は拭っても拭っても、止まらない。溢れ続ける。

泣いているけど激しい唯人の告白は、僚を喜ばせて、戸惑らせる。


「待て、唯人。その気持ちは嬉しいけど、達也のことは……?」


ズキ、と心が傷んだ。


「……好き、だよ。大切な、俺の……親友、だから」


本当に、好きだった。

恋人として、大好きだった。

でも、心のもっと深くに眠っていた、隠していた気持ちが出てきてしまった。


「勝手だと思うよね。心変わりが激しいって思うよね。もう、遅いと思う。でも、言わせて」


支えにしていた扉から離れて、自分の力で立つ。



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