秘める恋
□重なる想い
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「――好きだよ、兄さん。昔から、兄さんは俺の憧れの人だよ」
「唯人……」
「留学に行かないで、とは言わない。兄さんの将来を壊すような事はしたくないから」
僚にとって留学がどれだけ大きなチャンスなのか分かる。
だから、それを阻止したい訳じゃない。
伝えたかっただけだ、この気持ちを。
「今更、今日このタイミングで、ごめんね。――……兄さん、いってらっしゃい」
唯人は伝えた事に多少なりとも満足し、僚の時間の事も考えて部屋から出ようと扉を開けた。
だが、開けた扉は目の前で閉じられ、背中に人の気配を近くに感じる。
唯人は、僚と扉によって挟まれる。
「ふざけんな。このまま唯人を帰せる訳ないだろ」
怒気の含む僚の声に唯人の体は強張る。しかし、心臓の鼓動も早くなった。
「兄さん」
「唯人、こっち向け」
唯人が大人しく顔をゆっくりと後ろに向けた瞬間、僚に呼吸を奪われた。
「んっ……ふ、ぅ……」
今まで、人にこんなに激しく唇を奪われた事があっただろうか。
まるで、抑えていた感情を全てぶつけるように口付けを通して与えられた。
「……兄、さ、んぅ」
舌の出入りの間に息を吸い、僚を呼ぶが、その間さえも惜しいと言うように僚はすぐさま塞ぐ。
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