幼なじみ
□烈風の空 下
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「風野さんは、自分のことしか考えなくて、陽に冷たくした。陽を泣かせた」
「いや、俺泣いてないよ…」
「それなのに、傷つけられた陽は、未だに風野さんのことを心配してる」
「いや、だって幼なじみだし…」
「俺は、風野さん、嫌い。陽に、大切にされてるから」
まるで拗ねた子供のように、頬を膨らませる。
「何言ってんの。俺は、千歳も大切だよ」
それを、なだめる母親のように陽は言う。
「…それは、俺の欲しい気持ちじゃないけどね」
「ん?」
「ううん。なんでもないよ」
千歳は、陽の額にキスをした。
「ちょ、何して…」
「陽は、風野さんのこと心配?」
急に、千歳はそんな当たり前のことを聞く。
「うん。もちろん」
額に触れながら、陽はしっかり千歳を見て答える。
怜のことは、すごく心配。
たとえ、自分がうぬぼれていて、全然距離が縮まっていなくても。
それでも俺は、怜の為に走り回るんだと思う。
不器用な怜は、傷つかないように。
自分を傷つけないために、陽自身を犠牲にして。
……なんで、さっきあんなに自分が悲しかったか分かった。
怜が、傷ついていたからだ。
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