幼なじみ
□一水の行方 下
3ページ/13ページ
「どうかしたか、架連」
「あいつ、知ってる」
階段の踊り場まで行って、怜が聞いた。
答えた架連の表情は硬い。
「あいつ?神谷のことか?」
「あぁ」
「それは噂の転校生だから、ではなくて?」
的を射たように怜は話を進める。
「そうだ。……あいつ見た事あった」
「学校以外で?」
「ずっと、ちゃんと見たことなかったんだよ。せいぜい後ろ姿だけとかだった。でも、今日初めて正面から見た」
架連は、記憶から掘り起こす。
「あいつ、昔何度か連れられて行った親父のパーティーで見かけたことがある。たった一度だけ。すげぇ昔のことだし、確か幼稚園くれぇだから顔も曖昧なんだけど…。思い出した。一致した。あいつだ」
「パーティー…。でも、“神谷”なんて名字、どこの企業でもいないだろ」
「確かその時は藤宮(ふじみや)不動産とかだったんだよ。だから分からなかった。今のアイツの名字“神谷”だし」
カツっと靴の音がした。
二人は反射的に振り向いた。
「よく、気づきましたね。日野さん」
前髪を上げた状態の千歳がそこに立っていた。
「てめぇ…」
まるで、さっき陽と一緒にいた時と別人だ。
見た目も雰囲気も。
.