幼なじみ
□陽が陰る時
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「あの時の頃と比べて、随分大人っぽくなったが、性格も悪くなったな、千歳。でも、根本は変わってないみたいだな」
「…」
「猫みてぇに毛を逆立てて、俺を睨んでる」
子供の頃、一度だけ見た。
その時覚えているのは、鋭い目付き。架連を睨んでいた、あの瞳。
「さぞかし俺が憎いだろ。そこそこ良い家に生まれて、兄貴がいるから後継問題で何か言われてねえし、のんびりと過ごしてる俺が」
架連に兄がいることは、当時親から聞いてるだろう。
その為、架連が後継ぎの事とは無縁関係に過ごしていることも。
それに対して、千歳は一人っ子だ。
何かあったことは、容易に想像出来る。
「俺が憎いだろ?嫌いだろ、千歳?」
しばし無言の千歳。
長い間頬に触れているが、千歳は微動だにしない。
陽なら、近いと騒ぐ程の至近距離なのに。架連を嫌いなら尚更、拒否の反応を見せるはずだ。
やっぱり、千歳は分からない。
「そうですよ。あんたなんか…」
「ん?」
「昔から、嫌いで、憎くて、そして…」
「そして、なんだ?」
本当にコイツは猫みたいだ。
「……俺に、触るなっ!」
千歳が凄い勢いで、添えていた架連の手を払いのけた。
「…はぁ?」
千歳は強引に扉を開けて出ていった。
「急になんだよ、アイツ」
触っていたのは、結構前からだ。
今更言われても……。
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