幼なじみ

□陽が陰る時
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「意味わかんねぇ、千歳の奴」

変な奴。

それが架連にとっての千歳の印象だった。





「昔から、あの人のことは…」

千歳は図書室から出て、階段に立っていた。

寄りかかっていないと立っていられない程、気が興奮していた。

「苦手で、嫌いで、憎くて、そして……」

床に座り込んだ。


「羨ましくて、憧れだった。だってあの人は……俺の…」


冷たいわけでも、人懐っこい犬のわけでもない。

その時の千歳は、誰も見たことのない雰囲気だった。






「千歳?」

座り込んでいる千歳を見かけた。

「…陽?」

千歳は、見られたくないように、弾かれたように立ち上がった。

様子がおかしいのは、見て取れた。

「まだ授業してるよ?出なかったの?」

「あの後だもん。出れないよ」

「あの人と色々あった後だから?」

皮肉っぽい千歳。

やっぱり、いつもと違う?

どうしたんだろう。

「千歳からあんな事を聞いた後だからだよ」

図書室から出た時、陽は千歳に会った。そして言われたんだ…。


『今まで黙っててゴメンね。俺、風野さんと瑞野のことに関わってた。偶然じゃないんだよ、今までのこと』

『え?どういうこと…』

『じゃあ、俺行くね。あの人が待ってるから』



あの時は、あの人が誰かも分からなかったけど…。

あの人は、架連のこと?

なんで架連だけはちゃんと呼ばないの?

どうして最近の二人の出来事に、千歳が関わってるの?


疑問ばかりが浮かんで、授業どころじゃなかった。


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