好きな人
□〜真意〜
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俺が、選ぶ。
この人を好きなら、このまま一緒にいれる。
姉さんよりも、この人を選んだら、俺は、周りからどう思われるだろう。
瑠は不思議に思うのと同時に、少し怖くなった。
初めて、吉瀬さんを怖い人だと思った。
上手なんだ。相手を、自分の思う通りに動かすのが。
仕事の時はそんなそぶりを見せないのかもしれないけど、プライベートは違う。敢えて弱みを見せて、そして引きずる。
まさに今、瑠はその状況だ。
だって、この願いを拒否しても、受け取っても、吉瀬は何も影響しない。
元々、二人を好きだと言っているんだ。
拒否して俺と離れて姉さんを選んでも。受け取ってどちらかを俺が選んでも、どちらも被害は受けない。
強いて言うなら、傷つくのは瑠か紗季のどちらかだ。
そんな重い決断を、この人は俺に委ねようとしている。
「瑠、俺は、君に任せるよ」
分かっているんだ。
抱きしめて俺を離さないのも、鼻先がぶつかるような距離で俺を見つめてくるのも…。
すべて、分かっているんだ。
「吉瀬さん、俺……」
あなたが、俺の好きな人だって。
今までの誰よりも、あなたに惚れているんだって。
「ん?なに?」
瑠は、キレイな空気を吸った。吉瀬の胸に顔をうずめて、気分を落ち着かせる。
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