長編2
□標的1
1ページ/2ページ
天音side
瑞希が事故で亡くなった。
即死だったらしい。
ボールを追いかけて飛びたした子供を庇って引かれた、と聞いている。
まぁ、瑞希らしいといえばらしいが……。
それでも後先考えず行動に移してしまうのはやめてほしい。
助けられた子は軽傷だったそうだ。
今私は瑞希の葬式に出席している。
瑞希とは幼馴染みで、小さい頃から何をするにもずっと一緒だった。
私の両親が亡くなったときも、ずーっと側にいてくれて心強かった。
それだけに、未だに信じられないのだ。
「天音ちゃん!来てくれてありがとう。このあと火葬なんだけど……」
瑞希のお母さんが遠慮がちに話し掛けてきた。
「行か……ないです。……すみません。」
「いいのよ!そうよねぇ、急にこんなことになっても受け入れられないわよね。私たちもそうだったから…。」
この人は本当に優しい。
気遣わなきゃいけないのは私のほうなのに。
「天音ちゃん。また、遊びにいらっしゃいね。」
会場から出る際に優しく微笑んで言った。
いつも通りすぎて余計に悲しくなった。
まるで、現実から目をそらすなというように…。
その時はまさか瑞希の遺体が消えて、私も同じように消えるなんて思ってもみなかった。