短編

□偶然の産物
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“ご乗車誠にありがとうございます。次は並盛、並盛でごさいます。”

目が覚めたときそこは私がいつも利用する停車場をとっくに通り過ぎていて並盛に向かっていた。

「あちゃ〜。しまったな…やっぱり寝るんじゃなかった。」

などと呟いてみたところでこの結果が変わるわけではない。
後悔しても後の祭りなわけだ。

仕方がないのでこれ以上遠くへ行かないために降りることにした。

幸い、並盛は私が昔住んでいたところだったのと、従弟が近くに住んでいるのとで大体なら道が分かる。

しかし、困ったことに私の今住んでいる地域へのバスが一時間近くないのだ。

仕方がない。従弟の家にでも行って迎えにきてもらうか、泊めさせてもらうかでもするか。
どうせ明日は土曜日なのだから。
学校は休みだし。

そう自己完結すると、従弟の家があるだろう方向へと歩きだした。

なぜそんな曖昧なのかって!?
だってバスで行ったことないんだもん。
並盛に住んでたのももう10年も昔のことだし…
決して方向音痴じゃないんだよ。
って私は誰に弁解してるんだ。

数十分後、私は完璧に迷子状態だった。

「ど……どうしよう。」

従弟の家へ行くどころか、さっきのバス停車 にまでたどり着けないなんて。

「ねぇ、君こんな時間に何してるの?」

なんとなく昔聞いたことのあるような声が後ろからした。

「恭……ちゃん?」

そして私は振り向きながら言った。
そこには予想通りというか幼馴染みの恭ちゃんこと、雲雀恭弥がいた。

「!!まさか天音かい」

「やっぱり恭ちゃんだぁ。よかった道に迷っちゃったんだよね。」

神は私を見捨てはしなかった。
あっ。別にキリスト信者とかじゃないよ。

「……」

「……」

え!?なにこれ。沈黙が痛い。

「………はぁ」

「!!」

ため息つかれた。
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