短編
□♪バレンタインデーキッス
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やってきた先は応接室。
ここには、並盛最恐(強)といわれる雲雀恭弥がいる。
応接室のドアの前で一旦立ち止まる。
深く呼吸して、気持ちの整理をする。
そして控えめにドアをノックした。
そこで“ふと”気づいた。
最近この時間帯は見回りに行っているはずだ。
なんでここに来るまでに気づかなかったのかなぁ。
とか、そんな考えは余計だった。
何故なら
「・・・誰?」
と中から声が聞こえたからだ。
いるんじゃん。
いなかったら勝手に入って置いて帰ろうかと思ったのに(チクショー)
「如月天音でーす。」
「・・・入りなよ。」
応接室のドアを恐る恐る開けた。
「何でそんな開け方なの?…まぁいいけど。」
確かに思うよね。
いつもの私なら豪快に‘バーン’と開けて入ってくるんだから。
最初のころは、その度にドアを破壊してたような。
「遅かったね。君のことだから朝一番に来ると思ってたんだけど。」
怒ってらっしゃいますね。
うん。表情変わってないけどこれは怒ってるよ。マジで。
伊達に十数年幼馴染やってないんだよ!!
「あー。うん。ちょっとね…」
気まずっ!!気まずいよこの空気。
「じっ、実はですねぇ、大変申し訳にくいんですが、手作りをですね、失敗しちゃったわけですよ。つまりですね・・・今年は既製品のチョコで勘弁してください。」
言った!
言い切った!!
手には既製品のチョコ。
気まず過ぎて目をあわせられないこの状況。
手から重みが消えた。
と、理解した直後には‘ビリッ’と紙を破く独特の音が響いた。
そして
「天音」
と名前を呼ばれ顔を上げた瞬間―
「っん!?」
口を塞がれた。
名前を呼ばれたことにより緊張がほぐれたのかアホみたいに口が開いてたわけで、口内には何やら固形物と恭弥の舌が入ってきた。
固形物は二人の温度で溶けていく。
口に入ってきた固形物が先ほど自分があげたチョコだと気づいた時には、もう二人の距離は開いていた。
「今回はこれくらいで許してあげるよ。」
「///」
その時に見上げた恭弥は夕日に照らされているせいなのか、はたまた雰囲気がそうさせたのか、いつもより色っぽく見えた。
こんなバレンタインもいいかもしれない。