宝物
□後ろ姿
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結婚して1年の記念日に、外で食べようと提案したのは紛れもなく俺で。
誕生日にプレゼントしたワンピースを着るように、と指定した。
《じゃあ、駅前の噴水の所で待ってますね》
待ち合わせは18時。
それまでに仕事を終わらせねぇとな…
そんな時に限ってミスの連発が発覚。
「…ったくよぉ!」
『すみません!』
「謝ってる暇があるなら、さっさとやり直せ!」
約束の時間に少し遅れる事を美夜に電話する。
「悪い、1時間位遅れる」
「分かりました。でも、もう外なのでウインドーショッピングでもしていますね」
すまねぇな…と告げて、電話を切ったと同時にパソコンと睨めっこをした。
『原田部長、これでいいですか?』
「……あぁ、大丈夫だ。帰っていいぞ」
残ってくれた部下が使える奴らだったのはラッキーだった。 判をついて資料が完成し、時計を見ると19時を回っていた。 慌てて車に乗り込み、待ち合わせの場所に向かう。
あの後ろ姿は……
「美夜か?」
約束通りワンピースを着ていて、普段は肩辺りで束ねている髪はアップにしていて。
最愛の妻の後ろ姿に惚れた…と言っても過言ではない。
ただ、そう思っていたのは自分だけではないようで、ナンパらしき男二人組が声を掛けようとした所でその名を呼ぶ。
「美夜!」
「左之助さん!」
俺の大好きな笑顔で名を呼ぶ美夜を抱きしめずにはいられなかった。
「よく似合ってる」
「有難うございます」
真っ赤な顔して俺を見るのは寄せって。
違う場所に連れ込みたくなっちまうだろうが。
なんだ、彼氏持ちか…
と言うナンパ野郎のため息に似た呟きに、彼氏じゃねぇ夫だ!と言ってやりたかったが、そこは我慢して。
「じゃ行くか」
さりげなく腰を抱き寄せれば、恥ずかしい…なんて。
食後のデザートはお前で決定だな。
終
俺専用の甘いデザート
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