宝物

□ザクロの実
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まだ遠い昔のお話。

ある日、近藤は永倉を呼び出しました。

「近藤さん、どうした?って、誰だ?この女の子は」

「あぁ、雪村千鶴君だ。この娘を育ててもらえないかと思ってな」


近藤が永倉に託した雪村千鶴こそ、のちに冥府の国の女王となる少女なのだ。

永倉は千鶴を可愛がり二人は寄り添うように仲良く暮らしていた。

そんなある日、近藤は千鶴を冥府の国の王となっている沖田の妃にしようと考え、連れ去る計画を立てました。

永倉が大反対するのは目に見えている。

総司が住んでいる所は暗黒の冥府・死者の国。そこに嫁入りなど、同意するはずがない。


「さて、どうしたものか…」


珍しく1人、頭を抱えていた近藤の下に


「どうした近藤さん、らしくねぇな」


と、土方がやってきた。いいところに来たと言わんばかりに近藤はその企みを話して聞かせた。


「何の為に俺がいるんだよ」


俺に任せておけ、と言わんばかりに、総司は近藤さんに任せたと言った。




「新八さん、喜んでくれるかしら?」

千鶴は野原で花を摘んでいた。
永倉から愛情たっぷりに育てられた千鶴は、色白の可憐な少女になっていた。


その様子をこっそり伺っていた土方。


「新八、許せ…」


と呟き、千鶴から少し離れた位置に水仙を咲かせた。



「あれ?何だろう」


近くに寄って見ると、とっても美しい水仙が咲き乱れていた。


「うわぁ!」


感嘆の声をあげ、手を伸ばした
その瞬間─────



「いやぁー!新八さん助けて!!」


割れた大地から黄金の馬に乗って現れた総司に連れ去られたのだ。

千鶴が取ろうとしていたのはただの水仙ではなかった。

近藤と、近藤にそそのかされた総司の企みに協力した土方の仕業。

総司の待ち伏せている場所まで千鶴をおびき寄せる為に


「わざわざ咲かせてやったんだ」

しかも


「百輪つけた水仙をな」


だ、そうです。



その頃、冥府では


「グスッ…新八さん…」


千鶴は悲しげに泣いていた。
どうしてここに連れてこられたのか、どうして私なのか。


仕事では容赦のない総司も、普段はとても温厚で、そんな彼を部下も慕っていた。


「そゎなに新八さんが好きなの?」


と問えば


「育てて貰ってますから」


即答である。


近藤さんに千鶴ちゃんの事を聞いてからと言うもの、その姿を思い描いては、早く会いたい、早く嫁にと思っていたのだ。


「僕がどれだけ千鶴ちゃんを欲していたか知らないでしょ?」


知るよしもない。
地上で生活していたのだから。


「痛かったよね」


と、手首を拘束していた布を解き、赤くなっている所に


チュッ…

ひとつ、キスを落とす。


「キャッ!!」


真っ赤に頬を染め上げ自分を見る姿に



「やっぱり千鶴ちゃんが欲しい…」


と、総司は真剣に思うのだった。



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