短編
□出逢い
3ページ/10ページ
「お前、名は?」
「え……琉川です。琉川愛紅」
「琉川か。よし、着いて来い。丁度今は稽古中だ」
「!」
まさか了承してくれとは思わず、俺は礼を言ってから二人の元へ駆け寄る。
「勝手に良いのかよ斎藤」
「良いだろう。見学だけなのだし」
二人は道場の中に入ると、斎藤さんが俺も入るように促す。
中に入ると、道場内は思ったよりも狭かった。
こんなもんなのか…?
いや、確か兄貴が此処は田舎道場って言ってたし…人数も少ない。
「あれ?斎藤くんに左之さん、その子入門希望者?」
「おお、総司」
総司と呼ばれる男が俺達のところに歩み寄ってくる。
「いや、彼はただの見学者だ」
"彼"…。
ってことは俺完全に男に間違われてるって訳か…。
まあしゃあねぇか。
女に見られる方が珍しい。
袴姿だし髪短いし、こんな言葉遣いだしな。
おまけに声も低めときた。
俺間違えて女に生まれてきたんじゃねぇのかな…。
…まあ男として生きたいんだから好都合だよな、うん。
「ふーん」
…なんで俺コイツにこんなに見られてるんだ?