短編
□花
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ある日のこと。
「沖田―、羊羹いらねぇ?」
刀の手入れをする僕の前に、愛紅が羊羹を持って現れた。
「どうしたんだい?」
刀の手入れを終えて仕舞い、僕は愛紅を見つめた。
「さっきお千に会いに行ってたんだが。遊女達が菓子やら何やらくれたんだ。その一つがこの羊羹で」
羊羹の入った袋を僕に見せてると、机に置きながら溜め息をついた。
「俺、餡類嫌いなんだよ…。貰ってくれねぇ?」
「有り難く貰っとくよ。僕甘いもの好きだし。後で近藤さん達におすそ分けしよ」
僕が貰うと言うと、愛紅は良かったと言いながら床に座った。
「愛紅ってモテるね―。女子に」
特に"女子"に力を込めて言った。
こんなに同性に好かれる子なんて愛紅ぐらいじゃないか?
「悪かったね、女子にしかモテなくて」
「他に何貰ったの?」
「何か酒が多かったかな。俺が好きなの何故か知ってて…。上等なものが多くて少し申し訳ねぇ気がするよ」