キセキノウタ
□第4話:秋山家の人々
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暫くすると、カチャリ、と部屋のドアが開く。
「着替えたか?」
「……うん……」
そう言って澪は身体を引いて、再び龍聖を招き入れ、部屋に足を踏み入れた龍聖はドアを閉めて振り返れば、クッションを抱え込みペタン、と座り込んでいる澪の姿。
「ミスったのは秋山だろうが……」
そう言って龍聖は澪の斜め向かいにドカッと座って、わしわしと少し乱暴に澪の頭を撫でる。
「うぅ……っ、そうだけど……っ」
そう言ってチラリ、と上目遣いで龍聖の顔を見る澪。
破壊力抜群。
世の男達なら、一発でメロメロになるだろう。……男だけでなく、同性にも効果は抜群かも知れない。
だが龍聖には、効果は今ひとつのようだが。
「そういえばあの時も思ったが、異性に対して怯え方が普通じゃないな。何かイヤな事があったのか?」
と尋ねれば、澪は小さく頷いてクッションに顔を埋めた。
「(なる程、それであの2人の態度か)」
そう口の中で呟いて、龍聖は律と健の様子を思い出して納得した。
律と健は、そのイヤな事を知っている、或いは当事者ではないが関わっていた。でなければ、彼処まで神経質になったりはしない。
「その割にはオレに対しては、警戒心がないと言うかなんというか」
「う……ん。それが私にもよく判らないんだ……。
ただ初めて会った日、アルバラート君『幽幻桜』の枝に腰掛けてただろ?
あの時月明かりを浴びた『幽幻桜』の姿も幻想的だったんだけど、月明かりを反射して、キラキラ光る銀髪が綺麗で……その、それに見惚れて、恐怖心が湧かなかったのかも……」
多分それが、一番納得出来る理由。
「綺麗、ねェ……。オレから見れば、秋山の黒髪の方が綺麗だけどな」
そう言って髪を一房手に取り、ソレに唇を落とす。
気障野郎が。
しかもそれがスマートで絵になるから、タチが悪い。
「っ!? き、ききき綺麗だなんて、そんな……っ!」
噴火寸前な程、真っ赤になって、あわあわと両手を目の前で振る澪を見て
「(やっぱ面白ェな、秋山……。もうちょい弄ってみるか……?)」
鬼、降臨。
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