キセキノウタ
□第4話:秋山家の人々
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「……あの、さ……? アルバラート君に、幾つか聞きたい事があるんだけど……?」
クッションを抱き締めながら、澪は怖ず怖ずと口を開く。
「なんだ? 本の事なら気にするな。まぁ単語の中には、内容にそぐわない訳し方もあるだろうから、そん時ゃ遠慮なく聞け。……英語で返してやる」
「あ、やっぱり英語でなんだ……。って、そうじゃなくて!」
一瞬流されそうになった澪だったが、慌てて話を戻した。
「あの、アルバラート君って、オッドアイじゃ……?」
「なんだ、気付いてたのか」
「やっぱり。カラコン?……って、アルバラート君……何を?」
「ん? あぁ。何となく手持ち無沙汰なんでな。
今着けてるカラコンは、ちょい特殊なモンらしくてな? 姉貴が
『留学生でしかもオッドアイだなんて知ったら、益々近寄り難いわよ』
なんて尤もらしい事言ってたけど、要はオレでそいつのテストしたいだけらしい」
何となく手持ち無沙汰だった龍聖は、澪の髪を弄りながら答える。
「け、結構器用なんだな……、アルバラート君って……。男の人って、普通出来ないんだけど、編み込みなんて……」
何となく拒否しても止めないだろうな、と思った澪は、大人しくされるがままにして質問を続けた。
「瞳の色って、灰色と何色?」
「んー? 灰色と薄茶色」
「っ、!?」
出来た、とばかりにポン、と肩を叩いてそう返事をすれば、澪は驚いて龍聖の顔を見た。
「ほ、ホントに……っ!?」
「あぁ。ほら」
と龍聖はカラコンを外した。
その瞳の色は、確かに灰色と薄茶色のオッドアイ。兄と慕い、大好きだったあの人と同じ色。
「? どうした、秋山?」
「へっ? あっ、ご、ごめんっ。その、亡くなった幼馴染み……も、同じ様なオッドアイだったから、ビックリしちゃって……」
と、澪は慌てて言った。
同じ名前、同じ瞳の色。
本人なんじゃないか、と錯覚してしまう程に。
「ヘェ、そいつぁ珍しいな」
だが龍聖は差して気にした様子もない。
「澪ちゃーん、龍くーん、降りてらっしゃーい!」
「あ、はーい!行こっか、アルバラート君」
そう言って澪と龍聖は、ダイニングへと降りて行った。
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