キセキノウタ

□第8話:入部!そして始動
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「ホントかっ!?」

「歓迎しますわーっ」

「って、恭弥じゃねーか」

「あ、ホントだ。どうしたんだ?」



 律に促されて入って来たのは、入部希望の唯とただの付き添いだった筈の恭弥。



「あー、うん。メールの通りだ……」

「メール? とにかく座れよ。あ、平沢さんもな!」

「はぁ……」



 律に促されて、唯と恭弥は勧められるまま着席しようとした。



「ひでェよ恭弥っ!勢い余って、廊下の端まで飛んでったじゃねーかっ!」

「やかましいわっ」

「ぐふっ!?さ、サァーセンシタァっ!」



 ギロリ、と睨み付けながら恭弥は裕樹を踏みつけ、強制的に土下座をさせた。



 初めて見る恭弥の態度に、律達は目を丸くしたのだ。



「おおぅっ!お嬢さんっ!俺と「止めんかっ!」ぐぎゃあああっ!」



 メキョっ!



「っ!? き、恭弥っ!? 今凄い音っ!?」

「何時もの事だから気にしなくていいよ。そしてこのゴミの事も無視してくれ……」



 ボロ雑巾の様になった裕樹に対し、恭弥は冷たく言い放ち優しくするとつけあがるから、と念押しした。



「え、えぇっと、取り敢えずケーキでも如何?」



 スッとケーキと紅茶が、2人に差し出された。



「うわーい、いただきまーす!」



 途端に上機嫌で、ケーキを食べる唯とは対照的に



「……ここ、喫茶店か……?」

「……ごめ、軽音部だ……」



 眉を顰めて恭弥が尋ねれば、健は苦笑いを浮かべた。



「平沢さんって、ギターが上手なんだってね!」

「どんなギタリストが好きなんだ?」

「(っ!? なんかあらぬ尾ヒレがついてるーっ!?)」



 律や澪の矢継ぎ早な質問に、唯と恭弥は目を見開く。



「ひっ!?」

「俺は床上手です。そして好きなのは貴女でごっぱあっ!?」



 澪はいきなり感じた手の温もりに悲鳴をあげた。



 見れば、裕樹が澪の手を採り、至極真面目な顔で奇妙な事を口にしていた。



 そんな裕樹に容赦なく拳を振るう恭弥。



「うわっ!ちょ、たんまっ!」



 だがそんな恭弥の声を無視し、何処からともなく取り出したロープで裕樹をグルグル巻きにし、天井から逆さ吊りにする。



「ち、血がぁっ!頭に血が下がるぅっ!俺の分身にも血がギャアアアアッ!」

「テメェはもう黙っとけっ!」



 人間サンドバッグの出来上がり。



 人間だったモノに変わって行く様子を見て、澪が卒倒しない筈がない。律と紬が慌ててそれを支える。



「……ナルホド、メールの意味が、漸く理解できたよ……」



 あの日奏太達が言ってた意味とメールの内容が一致した健だった。










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