キセキノウタ
□第5話:初授業
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「おっはよー澪!」
「おはよう、澪」
「おはよう、律、健」
朝。
何時もの待ち合わせ場所で合流した律と健は、昨日響き渡った澪の悲鳴について、案の定詰め寄って来た。
流石に恥ずかしくて、本当の事を言えなかった澪は
「ぱ、パパがいきなりわたしの部屋にお客様を通しちゃって……」
「……ひょっとして着替え中……」
「………」
無言で頷く澪に
「……まさかとは思うが、知ってる奴だった、とか……?」
「………アルバラート君………だった……」
「…………ドンマイ………」
「うぅ……っ」
健と律は顔を見合わせ、同時にポン、と澪の肩を叩いて溜め息と共に吐き出した。
龍聖が自ら覗きをしたならばともかく、完全に事故。澪を責める事も、龍聖を責める事も出来ない。
「ん? でもなんで、アルバラートが客で来たんだ?」
律が首を傾げるのは尤もで。
「パパ、アルバラート君の保護者代理を頼まれたんだって」
「保護者代理?」
澪がそう言えば、健と律は再び首を傾げた。
「うん。ほら、入学式の時、アルバラート君の通訳を務めた女の人、いただろ? あの人、警視庁警備部の警視さんで、あの日偶々非番だったから、代理て参加したんだって。
で、直接ではないけど、一応パパの上司だし挨拶をしに行ったら、わたしも同じ学校なら、アルバラート君の保護者代理を引き受けてくれないか? って話しになったらしくて……」
と、澪は経緯を説明した。
「ナルホドなー」
「災難だな……」
と2人は素直に漏らした。未だ龍聖に対して、良い印象を持っていない律と健。
それはクラスメートもそうだろう。
しかし。
「……アルバラート君がね、律と健の事褒めてたよ?あぁいった真友は、中々見つからないから、大事にしなよって言われてた」
「………え?」
「アルバラートが……?」
「うん」
流石に驚いている律と健に
「真友って言うのは、本当に辛い時や大変な時に、傍にいて支えてくれる奴らの事をいうからな、って」
「…………」
ボフンッ!
「っ!? り、律っ!? 健までっ!? 噴火はわたしだけだって思ってたのにっ!?」
突然噴火した律と健に、澪は慌てふためいた。
自分はしょっちゅう噴火しているが、まさか律や健が噴火するとは思わなかったのだ。
「うぅ……っ、やってくれたな、アルバラート……」
「痛恨の一撃を食らったぜ……」
「なんでっ!?」
フラフラと立ち上がる2人の言葉に、澪はツッコミを入れざるを得なかった。
第5話:初授業
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