地下劇場
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何故、こんな事になったのだろう……。
イかされて呼吸もままならず、覚束無い思考でボンヤリと思い返す。
「最近、和に会ってないな……」
少女がつぶやいた。
彼女の名は秋山澪。
背中の中程まである艶やかな長い黒髪、薄紅色の唇、凛とした力強い瞳が意志の強さを表している美しい少女。
澪はデビューして以来、会う事が少なくなった恋人を想ってため息を吐く。
送迎の車の窓ガラスは外の闇を黒く映し鏡となっていた。
窓に映る自分の魂が抜けたような顔を見てげんなりする。
「会いたいよ……和」
今日は誕生日。
なのに仕事が入って何も誕生日らしい事をしていない。
事務所が借りているマンションに一人帰るのは寂しかった。
かといってどこに立ち寄るのもおっくうで素直に家に帰る事しか出来なかった。
「……誕生日も終わるな」
もうすぐ12時。
オートロックのキーを開け、エレベーターに乗り7階を目指す。
誰もいない私の部屋。
……和がいてくれたらいいのに、なんてバカな事を思いながら、ドアを開けた、ら。
バカな事が起こっていた。
「和っ!……と、さわ子先生??」
何故か2人がそこにいたのだった。
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