地下劇場

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『和×澪』




ベッドの枕元に置いてあった携帯が振動してメールの着信を知らせてくる。
ぼんやりした頭であとで確認しなくちゃと思いつつ、まだ一時和とゴロゴロしていたくて放っておいた。
そうしたら和が身を起こして突然言った言葉がコレだった。



「ねぇ、澪。私の事好き?」



少しだけ怒気をはらんだような感じの口調。
事後の気だるい身体を起こして和をジっと見つめる。和はシーツの上に正座し、いつになく真剣な顔でこちらを見ていた。

一体どうしたんだろう。私が何かやらかしたんだろうか。

この間勝手に和の分のアイスまで食べた事を怒ってるとか?ってこのタイミングでこれは無いか。
知らぬ間に怒らせるような事を言ってしまったとか?イヤイヤさっきまでイチャイチャしてて怒らせる事なんて言ってないハズだし。
和の怒っている理由が分からなくて首をかしげて聞き返す。



「和……どうした?」

「バイト先の男の子からメールが毎日来るわね」

「ああ、それは新しく入ってきたばかりだから色々アドバイスして欲しいって言われて。それで」

「そう」



和が不機嫌な原因は先程のメールの件のようだった。

でもなんでだ?

そう思っていると、すっと和が目を細めた。
瞳に浮かぶ光が残酷な程冷たい。
少しの寒気を覚えて首を竦めて目をぎゅっと閉じた。
私の怯えが伝わり和がハァと感情を抑えるかのようにため息を吐いた。
刺すような雰囲気が緩和されたので、そうっと目を開けると苦笑いを浮かべた和がそこにいた。




「澪、自分がモテる方だって分かってる?」

「……私が?いや、自分で言うのもなんだが人付き合いがうまい方じゃないし」



私は人が苦手だった。特に初対面の相手が。
知らない人と話す時なんて顔が赤くなって頭がパニックになってしまって何をしゃべっているか分からなくなる。
だから私がモテるなんて論外だ。モテるというのは社交術の上手な例えば和のような人をいうのだと思う。
私なんて背は高いわ、言葉遣いは女らしくないわ、モテる要素がドコにもないじゃないか。

モテる?冗談もたいがいにして欲しい。

心の底からそう思って否定をすれば、和が諦めたような口調でこう告げた。



「澪って本当に鈍いわよね。自分がどれだけ可愛いか知らないってコワイわ……」

「何を言ってるんだ?和」



可愛い?私が?ありえない。

大体可愛いという言葉は小さくてふわふわで猫とか犬とか愛らしい物を指すんじゃないんだろうか。
ひとつもあてはまらない私が可愛いなんておこがましいというものだ。
きょとんとした顔で小首をかしげれば、「あとね」と和が続けた。



「澪は私のモノだっていう自覚が足りないわ」

「え?な、何?」



両肩を掴まれてそのままベッドの上に押し倒される。
薄く口許に微笑みを浮かべている和の瞳には情欲が宿っていた。



「私、自慢じゃないけれど独占欲強い方なのよ……?」

「和……?え、ちょ……やっ」










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