キセキノウタ

□第5話:初授業
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「おはよー」



 教室に入れば、そこかしこで挨拶が交わされる。



 それは勿論澪達も例外ではなく……



「………」



 いや、例外がいた。龍聖だ。



 昨日の事を根に持っている女子が中心になって、龍聖を無視する事にしたらしい。



「(……そんな事して英語の単位落としたら、どうすんだろ……?)」



 全く関係ない事を考える澪。



「おっ、おはよう。アルバラート君……っ」



 そして昨日の事もあってか、澪は顔を赤くしながらも龍聖に朝の挨拶をする。



「モーニン」



 そんな澪に、本から視線だけを向けて、龍聖は挨拶を返し、再び視線を本に落とした。



「アルバラート!」

「ん?」



 不意に名前を呼ばれて、顔を上げた龍聖の目の前には、律と健の姿。



「昨日はゴメンっ!デリカシーのない事を言って!」



 パンッ!と両手を打ち鳴らし、律は手を合わせて頭を下げていた。



『僕も不躾な事を言って、済まなかった。ゴメン』



 と、これまた健も、龍聖に頭を下げた。



 頭を下げる律と健を何事か、とポカンと眺めている澪と、そして表情を変えない龍聖をやはりあ然と眺めるクラスメート達。



『……昨日もアキヤマに言ったが、2人の行動はアキヤマを思っての事と理解しているから、オレは気にしていない』



 と一旦言葉を切った。



『……だが2人の性格からして、簡単に頭を上げはしないだろうな……』



 そう言った後



「アリガトウ」



 とだけ言った。



「っ、あたしは田井中律!宜しくな、アルバラート!」

『僕は健、長津田健だ。改めて宜しく』

『こちらこそ』



 龍聖は差し出された右手の意味を理解し、律と健それぞれと握手した。










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