キセキノウタ
□第7話:入部希望!?
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「むぅ……。感じ悪いな……」
ぶう、と膨れっ面を見せる律に
「アルバラート君、なんかあ、あるのかな……?」
「なんかって……なんだよ?」
「そ、そこまでわ、判らないよ」
奏太の呟きに恭弥が尋ねるが、流石にそこまでは判らない。
だが。
「……理由は判らないけど」
「澪?」
「……他人、というか、人を信じられないんじゃないかな……」
「信じられない?」
「うん……」
先日のやり取りを思い出して、澪はポツリ、と言う。
龍聖は自分以外信用していないのだ、と。
あの日両親が『何があっても味方だ』と言った時、一瞬垣間見えた苦い顔。
あの表情に、澪は覚えがあった。
「……すべてを、拒絶する瞳だったんだ……」
「っ、」
その一言にハッとなる律と健。2人にも勿論覚えがあった。
忘れるはずがない。
「……確かにあいつ、眼が笑ってなかったな……」
「……澪は聞いてないのか?」
「……教えると思うか……? あの頃のわたしと同じ眼だぞ?」
「……だよな……」
澪の一言で溜め息を吐く律と健。知っているからこそ、龍聖の本当の笑みを取り戻させる事が難しい事も理解しているが。
「ぼ、僕らは良く判らないけどき、きっと大丈夫じゃないか、かな?」
「奏太?」
まだそんなに日が経ってないけど、と奏太は一言断ってから続ける。
「アルバラート君た、確かに眼が笑ってな、なくて、僕らの事し、信用してないかもし、知れない。でも、なんとな、なくだけどあ、秋山さんに対するた、態度はち、違うんじゃないか、かな?」
「わたしっ!?」
「う、うん。でもい、意図したものじゃな、ない気もするけど」
「で、でもそれは……」
あの日、わたしを助けてくれて、わたしの両親が保護者を引き受けたからに過ぎないと思う。
……それとわたし自身が、龍兄と龍聖を重ねているせいも……。
「……とにかく。たっつんの入部云々の話は置いといて「入部させる気かよ……」煩い!ともかく!たっつんがあたし等とちゃんと向き合って貰える様、頑張ろうぜ!」
「えらい気合いが入ってるな……」
「当たり前だ!あたしとたけぽんは、もうあんな思いしたくないからな!」
「律……。そうだな。時間は掛かるだろうけど、な」
呆れた様に恭弥が言うがニッと笑って律と健は、何かを決意する様にパン!とハイタッチを交わす。
そんな律と健を見て、改めて自分が2人に対して辛い思いをさせたんだな、と澪は少し寂しそうに微笑んだ。
「事情は知らないけど、あいつが嫌がってもドンドン絡んでいくか」
「うん/だな」
修司の言葉に、恭弥と奏太は強く頷いた。
「(龍兄……。律達なら大丈夫。信じられるから)」
澪はそっと、そう呟いたが、その呟きは律達の耳に届く事はなかった。
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