キセキノウタ
□第8話:入部!そして始動
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さて。話は前後する。
自身の入部を取り消すため、唯は恭弥にしがみついて、オカルト研だの心霊研究会だの、似た様な部室の前を通り過ぎて行く。
「……平沢さん、歩きにくいから」
「だ、だって怖いもん……っ」
「なんなら俺「ひろ君の手付きがやらしいからいい」アウチッ!あっ!そこのお嬢さーんっ!俺と付き合わなーいっ?」
「いやーっ!」
バキィッ!
「ふごあっ!?」
と、教室を出てから、ずっと裕樹はこの調子で、始めこそその度に恭弥は殴って黙らせていたが、それを見ていた他の女子生徒が友人にメールで連絡を入れれば、声を掛けられた女子生徒が断る手段として、手加減することなく殴っていたのだ。
恐るべし、女子の情報力。
唯もまた、1ヶ月も経てば裕樹の性格は充分把握していた為、裕樹のナンパも挨拶程度に捉えていた。
そんな裕樹に抱きつこうものなら、調子に乗るのも目に見えている。
だからこそ唯は、裕樹の胸倉を掴みあげた恭弥に怯えはしたものの、しがみつくなら恭弥の方がいい、となった訳だ。
「裕樹……テメェ何しに来たんだ……?」
「そりゃナンパするついでだ!」
「とっとと帰れ!」
ドゴオッ!
「みぎゃーーっ!」
渾身の蹴りを喰らった裕樹は、そのまま反対側まで蹴り飛ばされた。
これには流石の唯も目を丸くした。
「……とっとと済ませて帰ろう、平沢さん……」
「う、うん」
肩で息をする恭弥に、唯はコクコクと頷いたその時だった。
ポンッ!
「っ、ひょわうぇあっ!?」
「っ、うおっ!?」
「ウチの部室の前で、何やってんの? って、恭じゃん」
そんな最中、唯の意味不明な叫び声に驚いて恭弥も思わず声をあけだが、その張本人が律だと知るや否や
「りっちゃんか……。平沢の叫び声に驚いたんだよ……」
「平沢さんっ!? てかさっき、なんか飛んでった気「……見なかった事にしろ……」? あ、あぁ、判った……。てか入った入った!
みんなーっ!入部希望者が2人も来たぞーっ!」
「ちょっと待てい」
だが律は、そんな恭弥の言葉を聞く筈もなく、唯と恭弥を部室へと招き入れたのだ。
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