secret

□dark secret
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お妙さん、あなたは俺を分かっていない

お互いに酔っていた。

妙がいつもよりふにゃりとした笑顔で言う。

「近藤さん、ちょっとうちに寄って行ってくださいな。お茶でも出しますから。」

「ええー、いいんですかぁ!お妙さァん、愛してまフゴォッ!!!」

妙の鉄拳が近藤に飛んでくる。

本当はこんな拳、いつだって止められるんですよ? 
だけど、この痛みが俺を踏みとどまらせてくれるんです。
こうやって振舞うのも、あなたに本当の俺、薄汚い俺を見せないためなんですよ?

妙は近藤を家に招き入れ、二人でこたつに入って妙の入れたお茶を飲む。

ああ、なんて綺麗な人なんだろう。

近藤は妙の横顔をじっと見つめる。

妙がこちらを見る。
心なしか、そのまなざしは普段の数倍、あたたかい。

そんな目で見ないでください、お妙さん。
勘違いしちまいます。

「今日は新八君は?」

「万事屋に泊りなんです。」
妙は蕩けた笑顔でいう。

「そう、なんですか」

いいんですか?お妙さん、そんなに俺のことを信用して?
あなたは俺が何もしないと安心しきってるみたいだが、俺はいつもぎりぎりで踏みとどまってるんですよ?

「いやぁ、なんだか、こうしてると新婚さんみたいですね!?」
近藤はわざと陽気に振舞う。

「ふふふ、面白いことをいうゴリラね? これはただの餌付けよ? 勘違いしないで頂戴。」
妙がすかさず、近藤にこたつの向こう側から拳を飛ばしてくる。

近藤はその拳を片手でなんなく受け止め、強引に妙を自分のほうに引き寄せた。

妙の顔に驚きと恐怖がはしる。

「どうしたんです? 俺があなたの拳を止められるのがそんなに意外ですか?」
近藤は唇の片端をあげて笑う。

ああ、怯えてる顔もなんて美しいのだろう。
妙の黒い瞳が揺れる。

「このっ!変態ゴリラ!!!何しとんじゃぁぁああ!」

近藤が止めた右手とは反対の左の拳が飛んでくる。
近藤はそれも、空いているもう片方の手で受け止めるとそのまま妙を畳に押し倒した。

近藤が妙に馬乗りになり、妙の両手首を、それぞれ自分の手で握り、畳に押しつける形になる。
妙は悔しそうな顔をして近藤をにらみつける。

「怒ってる顔も可愛いですよ、お妙さん。」
近藤はいつもと変わらない笑顔で、にっこりと笑って言う。

「放しなさい!」
妙が平静を装った声で言う。だが、その語尾が震えているのを近藤は聞き逃さない。

「あー、もう、お妙さんは本当に分かってない。そんなこと言ったって、男を興奮させるだけなんですよ?大体、新八君もいないのに、こんな夜中に俺を家に招き入れて、誘ってるみたいなもんですよ?」



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