secret

□candy
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「ねえ、銀さん、飴あげる。」
万事屋の天井裏からいつものようにひらりと出てきたあいつはいきなりそんなことを言った。
「お前さー、銀さんは確かに貧乏だけどさ、いきなり出てきたストーカーに渡されたもの食べるほど落ちぶれちゃいませんよ。」
目の前に差し出されたのは小さなガラスビンに入った十粒ほどの桃色の飴だった。
「あぁん、もう銀さんたら、つれないのね。そんなとこが好きなんだけど。
 でも、これ銀さんの大好きな苺ミルク味なのよ?」
何に興奮してるんだか知らないが、頬を赤く染めながら、あやめは勧めてくる。
「だったら、俺、本物の苺牛乳のほうがいーわ。買ってきて。」
「もう…どうしてももらってくれないの?」
眼鏡越しに上目遣いで見つめてくる。
「そーいうので、誘惑できるほど銀さんは甘くありません。」
「じゃあ、たたいてほしい?それともたたきたい?」
あやめがどこからか取り出した鞭をしならせる。
「ちげーよ!人の家でなんつーもん出してんだ、お前は。」
あー、なんでコイツはこうなんだろうな。素材はいいのに。もったいねえ。
しゃべって台無しにしてるの分からないのか?
おいおい、そんな顔するなって。
ドMなんだろ?
いじめられてんだから、もっと嬉しそうな顔しろって。
そんな風にうつむくなよ。
おい。
「もー、しょうがねえな。」
そういうと銀時はあやめの手からビンをひったくり、飴を一粒口に入れた。
ほんのりと苺牛乳の味が広がる。
「ほら、食ってやったぞ。こっち向けよ。」
あやめが顔をあげた瞬間、銀時はすばやく肩を引きよせ、口づけた。
やわらかい唇してんな。
銀時は自分が少し興奮しているのに驚く。
恋愛なんてもんにはもう縁がないはずなんだけどな。
強引に口を開けさせ、あやめの口の中に、舌で飴を押しこむ。
「んっ…銀さ…」
あやめが甘い声を漏らす。
キスくらいで、そんな声で鳴くんじゃねーよ。
銀時は飴が完全にあやめの口に入ったのを確かめると、口を離した。

「銀さんの頭脳プレイにちょっと驚いたか?
 どうせ、睡眠薬とか仕込んであるんだろ?」
銀時は飄々と言い放つ。
ん、随分大人しいな?
やっぱ無理やりキスなんて仮にも主人公なのにまずかったか?
って、なんでそんな顔してんのぉぉぉ!?
あやめはうるんだ瞳で、赤い頬をして、一言でいえばとろけた顔をしていた。
「銀さん…これ…睡眠薬じゃないの。薬だけど…」
銀時の背中を冷や汗が流れる。
「え、なに?お前そんなヤバい薬俺に飲まそうとしてた訳?
 てか、大丈夫かよ?おい?」
あやめが、その場に崩れ落ちる。
「熱い…体が熱いの。」
銀時が慌てて、あやめを抱え起こす。
「ばかっ!早くそんな飴吐きだせよ。ほらっ!」
銀時はあやめの口元に自分の手を出す。
あやめは首を振る。
「飲んじゃった。」
「マジかよ。
 何の薬なのか、わかんねーのか、それ?」
はあ、はあ、と荒い息をしながらあやめが言う。
「媚薬よ…これを飲むとムラムラしてハァハァして、ピーしたくてたまらなくなっちゃう薬。」
「お前…」
がっくりと肩を落とした銀時は心底舐めなくて良かったと思った。
心配掛けさせやがって。知らず知らず、苦笑いしてしまう。

そんな銀時にあやめが体を擦り寄せてくる。


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