海外遠征
□「いってきます。」
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今日もいつも通り高井たちと高台の俺の家で会議していた。
が、高井から海外の大手企業から商談が来ていることを聞き、いつもより盛り上がっていた。これほどのいい話はなかなかない。長い間橋の下の住民の中にいようと、俺の社長としての素質は変わらない。
俺は高井に航空券を手配させ、出発の準備をしはじめた。その時
ドアが叩かれた。ニノさんだった。
「さっきから騒がしいがなにかあったのか?」
「あ、いえ…」
事情を説明しようとしたら、高井が俺の前にやってきて、
「行様は明日から、イギリスへ商談をなさりに行くのです。」と、説明した。
「そうなのか?」
「えぇ…」
「何日いないのか?」
「…わかりませんが、早くて1週間というところだと思います。長ければ1ヶ月ほどかと…」
その瞬間、ニノさんの顔が急に泣きそうな顔になった。
「そんなに長い間離れたら、お前のこと忘れるかもしれない…」
そうだった。
前にしばらくいなかった時ニノさんは俺の顔を忘れていたんだった。そんなことを考えていたら、ニノさんが俺に抱きついてきた。いい香りがして、頬が熱くなった。
「ニ、ニノさん…?」
「私はお前のこと忘れたくないぞ。」
「ニノさん…」
その瞬間、高井が急に俺たちの間に入って、ニノさんの方を向いた。
「あまり行様を困らせないでいただけませんか?」
「すまない。だが、リクは橋の人間だ。絶対に行かないといけないのか?」
「ニノ様、行様は橋の外では、大企業の社長であり、いつかは一ノ宮を継ぐお方なのです。いくら行様の恋人であっても、外の仕事を止めることは、わたくしめが許しません。」
「高井、言い過ぎだ。ニノさん、出来る限り早く帰って来ますから。なんなら毎日電話します。顔を忘れそうなら、テレビ電話しましょう。」
「うむむ…電話というものはまだ慣れんのだが。」
「ほ、星にでも聞いてください。」
本当は星になんか任せたくないけど…仕方がないとしよう。