海外遠征
□商談
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はぁ…
やっと着いた。
イギリス。
ニノさんにあってからはじめての海外。
はじめてこんなに離れた。
あぁ…もうすでにニノさんが恋しい…
いかんいかんこのままでは商談に身が入らなくなってしまう。そう自分に言い聞かせ、ホテルに向かった。
商談は明日からなので、ホテルのベッドに潜り込んだ。今ここは昼だが、日本では早朝であり、ニノさんに会う前ならともかく、荒川に住みはじめてからはいつもこの時間は寝ていた。その上に、久しぶりのベッド(しかも最高級ホテルのもの)の心地良さも助けて、俺は眠りに着いた…
「―――ニノさん…」
はっと目を覚ますと見慣れない光景。外はもう暗かった。もちろんニノさんはいない。顔を洗ったが、夢のなかでみたニノさんの憂いを帯びた顔が頭から離れない。電話したい衝動に駆られたが、今かけたらなにか負けそうな気がする。邪念を消すべく、明日の商談の準備をした。
すると、携帯に電話がかかってきた。表示された名は…
2-3…
驚いてしどろもどろになりながらも、急いで電話にでた。
「ニノさん!?」
「おうリクルートか?しょうだんは終わったか?」
「まだ始まってもいませんよ」
呆れたように言うと、ニノさんは残念そうに
「そうか…」
と呟いた。慌てて、
「商談は明日からですが、早く終わらせてみせます!!」
というと、今度は明るい声で、
「そうか!!」
と返ってきた。
「リク、早くお前に会いたい…」
その瞬間、心が軽くなった気がした。何故か口角が上がり、笑みがこぼれた。
「では、なるべく早く商談を成立させるために資料をまた練るので。今日はこれで…」
「おう、頑張れよリク!」
「では、明日は俺からかけますね。」
電話を切ると、パソコンに向かい、資料の再確認をしはじめた。
ニノさんの声を聞くことは負けることなんじゃなく、勇気や、やる気をもらうことなんだと気付いた。
ニノさんにあってから、たくさんの大事なものをもらった。俺は、何かあげれているのだろうか。
精算したくないこの思い。
家よりもニノさんが大切だと思った。
ニノさんが会いたいと思ってくれている。そう思うだけで、頑張ろうと言う気になる。
ニノさんの顔を見るためにも、早く終わらせられるように、俺はその後、朝まで資料を練り直した。