荒川SS
□今年もあなたと共に…
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ここは荒川河川敷。
一般社会とは少し離れた…いや、かなり離れた社会。
そこの住民の一人、リクが秘書に本来の家から持ってきてもらった年賀状の整理に勤しんでいた。
ひとつひとつちゃんと送った人からか確かめていると、恋人のニノがやって来た。
「おはよう、リク。」
「おはようございます、ニノさん。
あ、今年はじめてあったので明けましておめでとうございますですね。
今年もよろしくお願いします。」
「お、おう。
ところでリク、枕元にこんなものがあったんだが、なんだこれ。リクルートって書いてあったからお前のかと思ったんだが。」
そういってニノは紙を取り出した。
そう、
それは年賀葉書だった。
もちろん、リクが書いたものである。
「あぁ、年賀状ですよ。知らないんですか?日本ではその年にお世話になった人に送るんです。去年も送ったでしょう?」
「うーむ覚えてない。」
神妙な顔をしながらニノが答えた。
「あはは」
リクは苦笑いした。
「他に何かするのか?」
「そうですね…初詣とかしますけど、河川敷にはありませんからねぇ…」
「はつもうで?何をするんだ?」
「神様が祀られている神社と言う場所にいくんです。」
ニノはリクをまっすぐ見ながらうなずいていた。
「お賽銭をあげて願い事をするんです。」
その瞬間、ニノの顔つきが変わった。
「なんでも叶うのか!?」
いきなりの剣幕にリクは少し怯んだ。
「まぁ…そうですね…
心の奥から願ったらきっと叶いますよ。」
リクが答えると、ニノはリクの腕をつかんだ。
「リク、私たちもはつもうでに行くぞ!!」
そういって力強く引っ張りだした。
「ニノさん!!河川敷から出ないと神社はありませんよ」
転びそうになりながら、言うと、ニノは立ち止まって悲しそうな顔をした。
「そうか…
困らせてすまなかったな…」
その瞬間リクが胸を押さえ、うずくまり、苦悶し始めた。
「リク!!大丈夫か!?」
背中をさするとリクは汗だくの顔で振り向いた。
「ニノさん…
その顔、そのつらそうな顔をやめてっ…ください…
願い事なら俺が叶えますから!!」
「リク…」
リクの訴えに眉をハの字にした。
「俺はニノさんにっ…二度とっ…そんな顔をさせないと自分に誓ったんです。」
「わかった。」
ニコリと笑いながら言った。
「ありがとう、リク。私にはお前がいるんだったな…
遠いところにいる神様に頼らなくても…
お前がなんでも叶えてくれるんだったな。」
リクはニノのきれいな笑みに赤面しながら微笑み返した。
「はい。」
「リク、今年もずっと私のそばにいてくれるか?」
「当たり前です。今年と言わずいつまでも、どこまででも付き合いますよ。たとえ、金星でもです。」
「あぁ。」
いつまでも共にいると誓った恋人たちは手を繋ぎ新年の挨拶をしに出掛けた。