銀魂SS

□真珠のネックレス
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6月1日、部屋のノックで目覚めた。


しかし、早く支度する気にもならず、のそのそと着替えた。


すると、ポケットに違和感を感じて探った。


金属らしき感触に、何やらつやつやとしたもの。


引っ張り出してみると、真珠のネックレスだった。


チェーンは切れていて、つけることはできなさそうだ。


そもそも明らかに俺のような男が身に付けるようなものじゃない。


きっと似合いもしないだろう。


なぜこんなものが入っていたのだろうか。


俺は柄にもなくこの何の役にもたたなさそうな小さな石に興味を持った。


記憶を探ってみるが、こんなものを貰ったのはひとつしか心当たりがなかった。






あれはまだ、母さんが生きていた頃。


夜兎の血に目覚める前。


今思い出してもヘドが出そうなほど生易しかった頃。


最後の誕生会。


小さい妹は俺に小さな箱を渡した。


少し恥ずかしそうだったのが思い出させる。


「開けてみるアル」


と急かすのを、頭を撫でてやった。


開けると、真珠が入っていた。


真珠なんて安いものではない。


ごくわずかな星でしかとれないような稀少な品だ。


どうやらコツコツ貯めたおこづかいで、親父に買ってきてもらったようだ。


「兄ちゃんの、誕生日石真珠って聞いたネ。それでね、それでね、真珠の宝石言葉は、純粋無垢、健康、幸福アルよ!!兄ちゃんにいつまでも元気で、幸せでいてほしいアル!!」


一語一句覚えている。


弱いけれど、純粋無垢で、いつも元気で、幸せそうな可愛い妹。


愛していた、妹。






しかし今は弱いとしか見られない。


血から逃げる弱い妹。


「俺は今、幸せだよ。」


誰にともなく呟き、真珠を握りつぶした。


手から滴る血を舐めとり、部屋をあとにした。


→あとがき
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