text


□素直に。
2ページ/3ページ








廊下を歩き始めたその時…



 



――…フワッ…





『……へ!?』





一瞬、頭が真っ白になった。

右手に暖かい感触。



三橋の手が、俺の手を握っていた。






『……ぇ、あー…っと…』


柄にもなく慌てふためく。


だって…あの三橋だぞ!?
奥手でモジモジ挙動不信の三橋だぞ?!

こいつが俺の手を握ってくるなんて…






夢ではないだろうか。







「好き…だから…手…握っていいのかなぁ…って…」



『…あ、あぁ』


「……ごめん」


『…はぁ?!』



いきなり謝る三橋に大声を出してしまう。

今にも泣き出しそうだった。




『なんで謝んの。』


「だって…お、俺、阿部君…困らせた…」





…またやっちまった。


嬉しいあまり、色々考えすぎて…

きっと三橋には困ってるように見えたんだろう。




俺ってどうも、普段から怖い顔してるらしい…






『…困ってなんかねぇ』



「……」



『その…嬉しすぎた』



「…え」



頭をかきながら、ぶっきらぼうに言ったが…




「……ウヒ」


三橋にはちゃんと伝わってる。


こんなマヌケ面、今まで見たことない。





『そういや…手、暖かいな』


「う、うん…!!お、お…」


『……お?』


「…お、俺…も…嬉しすぎて!」



言っちゃった…と、ニヘニヘ照れる三橋。




『じゃ、今度から試合中も俺がいたら冷たくならないな。』


「…え!!あ、いや…そ…それとこれとは…べ、別」


『よーし、桐青との試合楽しみになってきたぜ』



「あ、阿部君…あの…えと…!!」







俺は三橋となら戦える。


三橋も、きっと俺となら…





夏はまだまだ、始まったばかり…―――











――END――



あとがき→



次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ