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□恋はもーもく
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「オレもなんか読もー♪」
『…勉強しろよ』
「気がむいたらねー♪」
(ったく…)
『………(ん?)』
近くの棚の段を物色する田島の背中を見ながら、自分のメガネに手を伸ばす。
『……おい、田島』
「…性と命……げ、文字ばっかじゃん」
『た、じ、ま!』
ここは図書室だ。
なるべく声を押し殺して田島を呼ぶ。
「…なに、これ読むのか〜?」
『ちげーよ!ちょっとこっちこい』
口を尖らせて不満そうに寄ってきた奴の腕を掴む。
『お前…靴変じゃないか?』
右の靴の先が右へ、左の靴の先が左へと向いていた。
つまり左右反対に履いてるという事。
「あーバレたか…!」
『バレたか!じゃないだろ、なにしてんだ?!』
「だって靴の裏が削れてんだもん」
『…は?』
そう言って靴の裏を見せてきた。
歩く時のバランスによって、左右どちらかの底が薄くすり減ってくるあれだ。
『だからって何で左右反対に…』
「矯正!」
『…は?』
「削れてない反対側も削れて一石二鳥だし!」
『……』
満足げに笑う目の前の麒麟児。
「ちょっと歩きにくいけどなー」
『お前アホだろ…』
「なんでだよ!阿部も感心してたぞ!」
『騙されてんだよバカ』
(ったく…!阿部のやつ…)