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□キミ日和
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『……』
「ふんふ〜ん♪ふふ〜♪」
『……水谷のせいで遅刻しそう』
野良猫を見つけて立ち止まって呼んでみたり、鼻歌に夢中で車に突っ込みそうになったり。
ほんと目が離せないんだよね。
「え、うそ!今何分?」
焦って自転車のギアを替えだす水谷。
『チャイムまであと6分弱…かな』
一時間目に費やす体力を注ぎ込んでペダルを漕げばなんとか間に合う距離。
「よーし…!!」
『車にだけは気を付けてよ』
グッと強く足に力を込めた瞬間、
「遠回りしよーっと!」
『……はぁ!?』
満面の笑みで遅刻宣言。
この場に阿部がいなくてつくづく良かった。
「だって急ぐの勿体ないじゃん!」
『水谷をそんな不良に育てた覚えはありません』
「なんだよそれー!花井みたい!」
いやいや、花井ってどんな存在なわけ?
「こんな天気良いんだしさ、ね?ね?栄口、ゆっくり行こ〜??」
すい〜と自転車を更に寄せて懇願する、
いわば必殺技に近いんだよね、こーゆう時の水谷って。
めちゃくちゃ可愛いんだ。
『べ、別に…構わないけど、さ』
あー、結局こうなるんだよね。
「やったー!栄口大好きー!!」
『…あのさ、そーゆう言葉は気安く言うもんじゃないから!』
なんて、精一杯の照れ隠し。
「栄口ともっと一緒にいたいから遠回りするんだもーん♪」
ほら、またそうやってクラクラさせるんだ。
『調子良い事言って…』