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□それくらいが丁度いい
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『さっき、準太と利央を見た』
「それで…？」
『オレと山ちゃんってさー…恋人？』
「なにそれ、面白いねー」
『ごめん、これ…マジな質問だから』
いつもの調子で答える山ちゃんに、真剣さが少しでも伝わるだろうか。
期待と不安で今にもふざけてしまいそうなオレの耳に届いた言葉。
「…マジに話し合う内容なわけ？」
(え……)
一瞬にして冷たい表情になった山ちゃんに面食らってしまった。
『ごめん…怒らせるつもりじゃ…』
嫌われるくらいなら曖昧な関係でもいい。
本気でそう思ったオレはすぐさま頭を下げていた。
「えーい」
『いてっ…』
そのまま山ちゃんの緩いチョップが決まる。
「…オレ、本やんが好きだよ」
『……え』
「伝わってると思ってた」
山ちゃんのチョップを決めた手はまだオレの頭の上にあるけど。
いつものふざけてる山ちゃんじゃない事くらいは顔を見なくても分かる。
『ごめん…あいつらに少し妬いてたのかも』
だってほら、名前で呼び合ってるし…
と、真剣な空気がムズ痒くてやたらと喋ってしまう。
「ねー本やん…」
『な、なに…？』
「キスしたらオレの気持ち伝わる？」
ここが教室とかそんなの関係なく。
もう訳が分からないくらい山ちゃんのフェロモンに酔ってて。
気が付いたら言ってしまっていた。
『…試してみよっかー』
恐る恐る触れてみて、それからお互いに溺れるようなキスをした。
「そろそろ…っ、誰か来ちゃう…よ」
なんて、恥じらう山ちゃんに理性を全部奪われて。
好きだの愛してるだの、甘い囁き合いはなかったけれど。
それくらいが丁度いい
（祐史クン、責任取ってお嫁にもらってねー）
（まだキスしかしてないじゃん）
（よろしく。ダーリン）
（てか、祐史って呼びましたね）
（イヤ？）
（まっさかー、チョー嬉しいー☆）
（…やっぱキモイから本やんて呼ぶわ）
（え、山ちゃんヒドイ…)
―END―
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