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□その愛らしさは罠か道標か
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「お、下ろしてっ…重たいから!」

『ひょろっちいくせによく言うぜ』

「とにかくヤダ、下ろしてよぉ…」

『断る、階段危ないから大人しくしろ』

「…スケベ、変態、垂れ目、色魔」

『どんな言われようだ』



ほら、お姫様お布団ですよー。

なんて言ってゆっくり寝かせてやったら、ほんわりリンゴ色の頬をさらに染めちゃってさ。


「準さん、王子様みたい」

『みたいじゃなくて、王子なの』

「ぶっ…ホモ王子ぃ」

『うっせー、早く寝ろ』



利央の熱でか、部屋は少し蒸し暑く。

息苦しそうな利央の呼吸遣いが耳によく届いた。



『お袋さんと親父さんは』

「仕事ー」

『呂佳さんは』

「最近は滅多に帰ってこないよー」

『ふーん…』


雑誌やら教材が机や床に散らばって、壁にはコルクボードに刺さったポストカードや写真。

最後に来た時とあまり変わってない。



『掃除しろって言ったよなー』

「んー…」



もう目を開けるのも辛いのか、ぐったりとしたまま返事だけが返ってきた。

ちょっと悪戯したくなる衝動を抑えつつ、タオルを濡らしに下へ降りる。


(そうとう辛そうだな…)


適当なタオルを見つけて水を含ませたら、すぐに上に戻った。



『…って』

「あ、準さんどこに…」

『なにしてんのお前』

「え…座布団を」


ふらふらしながらいつもオレが使っていた座布団を用意する利央。

自分の体の事よりオレの膝と腰の心配かよ。


オレはいっつも遠慮なく利央に突っ込んでるっつうのに。

(あぁぁ、考え方がだんだん慎吾さんみたく…)









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