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□その愛らしさは罠か道標か
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『ふざけんなよ、寝てろ』

「へーき、元気出てきた」

『……おらっ』

「ぷぎゃ…!」


ぺしゃっ!!と水を飛ばしながら、濡れたタオルが利央のデコに命中する。

冷たさが気持ちいいのか、そのまま布団に寝転がっていった。


『なにが元気だ、この病人』

「……」

『…辛いか?』

「…準さん学校は?」

『連絡入れた』

「和さん達には…?」

『……』


こいつはどうして素直に甘えるだけを…

心配性にも程がある。
まぁ、根が真面目な奴だし仕方ないのか…



『…あ、もしもし、和さん?ちょっと利央が…はい。…すんません、お願いします。じゃあ…』


携帯を閉じると、利央がタオルの端をめくりあげてこっちを見ているのに気付いた。

迷惑かけてごめんなさい…って顔だ。



『オレは利央といられるから嬉しいんだけどなぁ…』


よいしょ、と隣に寝そべって利央の手に触れる。


「オレも…嬉しい、へへっ」


ずり落ちたタオルから見える間抜けな笑顔が可愛すぎて、思わず口づけてしまった。

まるで導かれるみたいに。




「ん…準さん、風邪…移る…」


熱を帯びた利央の目や唇はいつもより妖艶に見えて。



『早く治してくんなきゃ破裂する』

「…変態、そんな元気ないよ」

『じゃー、ちゃんと病人らしく甘えろ』




コクッと頷いて小さく


「薬は準さんの愛だね」








その愛らしさは罠か道標か





(やっぱダメだ…誘ってるだろ)
(ちがっ…その愛じゃなくて)
(これが欲しいんだろ…?)
(きゃあぁー!!変態ー!!)
(冗談だって、叫ぶなよ)
(じゃあその誇らしげなの締まって)
(……ちょっとトイレ)
(やっぱり変態ー!!)







―END―

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