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□ブーケなんかなくとも
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案の定、その日以来利央はオレとあまり口を利かなくなった。

普段の喧嘩はすぐに機嫌直して甘えてくるくせに。




『利央…今日練習ないし、飯行くか?』

「…行かない」

『……』


(…今回は根に持ってんな。)



「なに、お前らまだ喧嘩してんの?」

『本さん…』

「オレ行くとこあるんで失礼しますっ」

『あっ…りお…』

「うわー…可愛くねぇなー」

『…はは』


ぷりぷりと不機嫌なオーラ全開な利央の後ろ姿を見送りながら、それでも口元が緩むオレはどうかしてる。

…と、そこへ帰宅準備を終えた山さんが来た。


「あれ?利央また先帰ったのー?」

「オレは山ちゃんを待ってたー」

『なんか行くとこがあるって…』

「あー、また教会ね」

『え…教会っすか?』

「なんか最近、結婚式がどうとか…」

『なに考えてんだあいつ…』

「本やんタキシード似合いそうだよね」

「山ちゃんは純白のドレスなー」

『…あの、その教会どこですか』

「え?」





いちゃつきだす先輩を残し、利央の通う教会に向かった。


『オレとの飯より他人の式かよ…』


そういえばここんとこ練習がない日はすぐに帰ってたな、あいつ。



―花嫁さんスッゴイ綺麗でさぁ!




(乙女心ってなんだよ…ったく…)







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