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□微笑みにご注意
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「好きだよ、本やん…」
その言葉をようやく引き出せた夏の終わり。
あれから数ヶ月が過ぎた。
『あのさー』
「なにー」
『山ちゃんってオレが好きなんだよな』
今日はオレの家にて勉強会。
まぁ、オレにとっては勉強会というのはただの名目だけど。
山ちゃんと共有する時間であれば理由は何でも良かった。
「好きだよー?」
そんなオレの気も知らず、律儀に参考書を眺める山ちゃん。
『オレの目を見て言いなさい』
ぽてっと微かに赤みを帯びてる山ちゃんの頬。
柔らかな表情と耐えない微笑み。
「…気色悪い」
そうそう、オレの知ってる山ちゃんはそーゆう奴だよ。
可愛い顔して酷い事言うんだ。
『オレって意外と打たれ弱いのよ…』
わざとらしく泣き真似をするオレを見て、山ちゃんは楽しそうに笑った。
こんな会話をこの先あと何年交わす事が出来るんだろう。
時々、そんな考えが脳裏を掠めてオレの表情を曇らせる。
「…本やん」
『なに、改めて愛の告白?』
「この先の為、本やんを打たれ強くする調教中なんだよ」
『えー?』
この先、ってなんだよ。
ずっとオレと一緒にいてくれる宣言?
だよな、そーゆう意味だよな。
祐史マジ感動。