「ごめん…ね?」
『別にいいよ…』
目を合わせようとしない水谷。
確実に怒ってる。
いや、違うかな。
悲しんでるような表情。
「新しいの買うから…!」
『それ廃盤でもう売ってないんだよ』
「そ…そうなんだ…」
傷の入ったディスクを愛おしげに指でなぞるその仕草。
オレを責めるでもなく。
静かに、静かに繰り返される。
「ごめん…オレの大事なもの壊せば…」
そこまで口にして、ハッとなった。
オレにこんな大事な物なんてある?
『栄口の大事なもの…』
「………」
『大事なものって…?』
「……あ」
思い出した。
なにか見覚えがあると思ったんだ。
「このCD…オレがクリスマスにあげたやつだ」
『思い出した?!』
さっきまでの暗い声はどこへやら。
嬉しそうな水谷の笑顔がこんなにも早く見られるとは思わなかった。
『オレ…このCDの特別さを栄口が忘れてるのが悲しくてさ…』
「ごめん、水谷は大事にしてくれてたのにね…」
『思い出してくれたから許すよー』
そう言って水谷は優しくオレを抱擁する。
「あのね、水谷…」
『なにー?』
「オレの大事なもの」
『うん』
「水谷しか思いつかないや…」
『あはは、ロマンチックー!』
「ほ、本気で言ってるのに!///」
(聴けなくなったCDの代わりに
オレがずっと愛を唄うから。)